障害? 障碍? 症?

発達障害

 前回、発達障害に関して医療と法律だけでも用語の統一が難しいという話をしました。ただ、それ以前の問題として、「障害」という言葉の表記について昨今では議論がありますよね。

 「障害」という言葉の意味は、「ものごとの達成や進行のさまたげとなること、また、さまたげとなるもののこと」です。この「さまたげになる」に対して「害」という字が使われていることに引っかかりを持つ方がいらっしゃるわけです。

 では、「害」という字の意味はというと、

1そこなう。傷つける。こわす。2さまたげる。3わざわい。災難。

になっています。この、1や3が引っかかりの部分ですね。そのため、最近では「障碍」という表記が使われることも多くなっています。

 実は、この表記には歴史的な背景があります。もともと仏教用語として障礙(しょうげ、略字で障碍)という語が「邪魔する」といった意味で使われていて、それが明治時代に「しょうがい」と読まれるようになり、大正時代には「障害」の方が一般的になったようです。さらに、戦後になって当用漢字表や、国語審議会による法令用語改正例によって「障害」の表記が採用され、「障害」に一本化されました。その後、1981年に常用漢字表が告示され旧当用漢字表における強制性が弱められたことで、最近では「害」の字を避け「障碍」の表記が一部では使われ始めたというわけです。こう考えると、「障碍」の方が本来の表記なのかもしれません。

 一方、医療の世界では違う表記への試みが見られます。発達障害を含む精神疾患等の診断基準として米国精神医学会のDSM-5が用いられているという話を以前しましたが(https://educationservice.net/2020/05/20/)、英語では、生理的な機能障害はimpairment、impairmentの結果生じる能力の障害をdisability、精神障害については変調を意味するdisorderと、使われる用語が異なっています。ところが日本語ではどれもがひとくくりで「障害」と同じ表記になっています。そこに問題があるとも言えますね。そこで、日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会は、児童青年期の疾患と不安関連の疾患においてdisorderを「症」と訳すことを決定し、当面は、「~症」と「~障害」の2つの訳語を併記していくそうです。(個人的には「症」はまた違った弊害があるような気がしていますがここでは割愛します)

 

 発達障害に関する記事を書き始めてからずっと固い話をしています。私の学校と家庭での子育て経験の話を期待されている方もいらっしゃるかと思いますが、用語や定義が障害受容などの親御さんの認知に大きな影響を与えていると経験上感じているので、できるだけベースとなる情報(定義などが曖昧だという情報も含めて)は事前に共有しておきたいという考えに基づいて書いています。既に知っているよという方も大勢いらっしゃると思いますが、今しばらくお付き合いください。

 

 なお、「しょうがい」の表記については当ブログでは当面の間「発達障害」という従前の表記で記事を書いていきます。私自身は親として表記について全くこだわりがないので。ご了承ください。

 

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