障害受容その3「学校と家庭」

発達障害

 子供たちが就学して小学校生活が始まると、それまであまり経験のなかった「座って授業を受ける」という活動が始まります。また、園児の頃より大きな集団での集団行動も行われます。当然学校は子供たちの適応を考えてカリキュラムを組みますから、適応スピードに差異はありますがおおよその子供たちは授業スタイルや集団行動に慣れていき、それが学校生活なんだと体験から理解していきます。

 ところが、一定の割合で授業や集団行動に上手く適応していけない子供が出てきます(就学後すぐではなく年齢が上がってから不適応を示す子もいます)。その子供の行動や特性について学校はしっかりと観察等を行い、適切な支援を行うためにその子供の保護者に連絡を取ります。お住まいの自治体によって支援までの手順や支援の方法は異なりますが、基本的には発達検査でお子さんの発達の偏り等を把握しなければなりません。この発達検査を実施する際に当然ながら保護者の同意、協力が必要になります。

 ここからは私の経験に基づく話になりますが、上記の保護者の同意を得ることが簡単なことではありません。ASD傾向が強いお子さんですと家庭での様子から親御さんも違和感や困り感があったりして比較的すぐに学校からの連絡を理解されることが多いのですがそれに対し、ADHD傾向が強いお子さんの場合、家庭ではあまり困り感を感じておられず学校からの連絡を否定的に捉えられるケースがよくあります。注意欠如や多動といった行動は、集団と個という環境の違い=「学校と家庭」では表出の仕方や周りの大人の捉え方がかなり乖離があるんですね。家庭という最も小さなコミュニティではADHD的特性が「まだ小さい子だから」という認識になりがちです。

 学校もこういったことは承知していますから、いきなり「お子さんに発達障害の疑いがあるので検査を受けてください」みたいなストレートな伝え方はしません。学校に対して不信感を持たれるどころか訴えられかねません。実際には「お子さんの学校での様子で気になることがあるので一度授業の様子を見に来ていただけませんか」というアプローチが多いです。集団の中でのお子さんの特異性を見てもらうことで「受容」に向けたファーストステップを踏み出してもらうわけです。

 ですが、子供はお母さんやお父さんがいると行動を制御するんです。それは無意識に「お母さんに良く思われたい」とか逆に「怒られたくない」とか感じているのかもしれません。中には親御さんが学校に来るのを事前に知らせないようにして、しかも姿が見えないように参観してもらってもいつもと違う動きをする子供もいます。子供の察知能力はすごいものだと感心させられます。余談ですが、このような動きをした子供は親御さんがいなくなった後いつも以上にはっちゃける事が多いです。

 子供のためには当然ながらできるだけ早くその子に合った支援を受けさせたいのですが、上記のような理由から全く手立てが取れず時間だけが過ぎてしまうケースも実際にあります。私が経験した中で一番厳しかったケースは、突然弁護士の先生を同伴してお母様が来校されたときです。お母様の障害受容が完全に「否認・隔離」から前進することが望めなくなったので、お子さんのことを考えると苦しい思いでいっぱいでした。

 お子さんの学校生活のことで学校から話があった場合には、「学校と家庭」では子供の様子は異なるものだということを念頭に置いて、学校からの話に耳を傾けてもらえたら幸いです。

コメント

  1. 阿部健二 より:

    「取引」とは何ですか?
    私、一昨年、中学校教師を退職したものです。発達障害に関心があります。不登校生の15歳~18歳までの人たちに、社会はあまり光を当ててないような気がするのですが、どうでしょう。

    • Takao Kishido より:

      コメントありがとうございます。「取引」という用語は、キューブラー=ロスの提示した「死の受容」の五段階で使われている用語です。杉山登志郎先生がキューブラー=ロスの「死の受容」を「障害受容の過程」に当てはめたものを引用しているため、「取引」という語をそのまま記載しています。「取引」の段階はお子さんの障害を「無くせる」なら親として「何でもしようとする」段階です。本来無くせない障害を「無くす」ために親が苦労することと「取引」しようとする段階と考えればよいかと思います。
      高校生世代の不登校に光があたっていないというのは確かにそうだと私も感じています。不登校は中学校から急増しますが、まさしく子供たちの社会性が成熟していく過程で不適応を起こした子たちが不登校になりますよね。今すぐにソースを提示できないのですが、不登校の5割以上が発達障害だという研究結果もあります。私自身は不登校の子を登校させることは必ずしも正しくないと考えています。集団の中での困難さを受容できる子もいれば苦痛を助長するだけの子もいるからです。社会での体制が整っていないのはまだまだ課題だと思いますが、組織に属さなくても収入を得て生計を立てることができる時代になりましたから(YouTuberなどが良い例です)、ネットを介した起業などのサポートが充実していくとよいのかもしれません。

      • 山口 誠 より:

        私、教師が好きで、好きなことしてお金を貰えて、幸せな人だったと思います。
        ただ、心残りが不登校生。

        よく言われるのが「中1ギャップ」。なぜ、中1になると急に増えるのか(私はその答えを知っているつもりです)。そもそも少子化が進むのに、なぜ不登校は右肩上がりなのか。その事があまり話題に登らないのが不思議です。
        その内の何人かは「引きこもり」になっていくでしょう。

        ある中学校で卒業式が終わっても帰らないクラスがあったので、注意しようとおもったら、校長室で卒業証書授与の生徒たちでした。分かってはいましたが、その多さを目の当たりにして驚きました。その中には発達障害の生徒もいることでしょう。周囲から育て方が悪いと言われた親御さんもいることでしょう。
        私の残りの人生、そうしたとじ込もっている若い人たちに捧げたい。実は私も精神障害者なのです。教師晩年発症のマレなケースです。
        何か分かりやすい本を紹介して頂きませんか。また、何かノウハウがあれば、教えて頂きませんか。

        • Takao Kishido より:

          人生の後半をいわゆる「引きこもり」の若者のために捧げたいという高崇なお気持ち素晴らしいですね。
          頂いたコメントではどのジャンルの書籍をお求めなのか私の力不足でわからなかったのでざっくりとしたお答えになりますが、不登校メインで捉えれば、千葉孝司先生の書籍が参考になるかもしれません。発達障害そのものを理解するのであれば杉山登志郎先生の著書がよろしいかと思います。発達障害を初歩から学ぶのであれば数多く書籍は出ているので大きめの書店で探されるのもよいかと思います。
          私から直接レクチャーとなるとコンサルティングになりますので、別タブからコンサルティングをお申し込みいただくことになります(有料なので恐縮ですが・・・)

          なお、教職後半、最終期で精神疾患になられる先生は実は結構いらっしゃいます。上手く疾患と折り合いをつけていけるよう、お医者様と一緒に治療を進めてくださいね。

          • 山口誠 より:

            ありがとうございました。私の母が躁鬱病でした。3割遺伝すると聞いたことがあります。
            娘に遺伝しないことを願っています。

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